満鉄パシナ形

1980.5. 蘇家屯機関区 Photo by: Eiji Nozawa

くろがねのみちの野沢英治さん推薦

(写真提供:野沢英治さん この写真は転載禁止です)

日本の他に中国や東南アジアの蒸気機関車に関する豊富な画像と資料を

掲載したHPを開設しておられる野沢英治さんより非常に貴重な画像を

お送りいただきました。なんと旧南満州鉄道のパシナ形蒸気機関車です。

パシナ形は新京−大連間を結ぶ高速旅客列車「あじあ号」を牽引するために

1934年(昭和9年)から1936年(昭和11年)にかけて川崎車輌と満鉄沙河口工場

にて製造されたパシフィック機ですが、1,435mmの標準軌(日本では広軌と

呼ばれることもあった)を採用しているため、日本国内用の機関車よりひと

まわり大きく高速な蒸気機関車となっています。

機構的にもボイラー効率を向上するためE型加熱装置、多弁式加減弁、給水

加熱器を採用し、絶気運転中にシリンダーの冷却を防ぐためのオートマチック・

ドリフティング・バルブを装備、車体には軽量化のため特殊鋼や軽合金を

随所に使用するなど当時の先進設計がふんだんに盛り込まれています。

外観は流麗な流線形、動輪は直径2,000mmの巨大動輪を採用、近くで見ると

そびえ立つような迫力に圧倒されたといわれています。

日本国内では1,067mmの狭軌軌間と軸重16t以下という条件のため蒸気

機関車の設計にも厳しい制限が加えられざるを得ない状況にありましたが、

満鉄の場合はそういった制限から開放されるため、日本の若い鉄道技術者

達は自らの「理想」をこのパシナ形に追い求めることができたわけです。

こういった話は鉄道以外の世界にもよく見受けられます。

たとえば旧日本海軍は大正年間に巡洋戦艦「金剛」の建造をイギリスの

ビッカース(Vickers)社に発注しましたが、同社の若いエンジニア達は伝統を

重んじる保守的なイギリス海軍では受け入れられない先進的・実験的な

新機構を次々と「金剛」に採用し、その結果「金剛」は当時の世界の海軍界

で最も優秀な高速巡洋戦艦となってしまってイギリス海軍を慌てさせたという

例があります。(里見)

1942年10月発行「科學朝日」誌より転載