箱根登山鉄道モハ2形

Photo by: Nobuhiko Nishimura

西村暢彦さん推薦

(写真提供:西村暢彦さん この写真は転載禁止です)

 

 100撰(200撰)に新規推薦したい車種があります。

 それは、箱根登山鉄道の登山電車です。1000分の80という急勾配

 を粘着だけで上る、日本唯一の鉄道です。

 関東以外にお住まいの方にはなかなかなじみの無い車両です。

 どうか、おとりあげ下さいませ。

  

箱根登山鉄道は全国の地方私鉄の中では最も世間の注目を浴び続けてきた

路線なのではないでしょうか。その理由は明白で、同線が「箱根」という関東

地区のみならず日本を代表する有名観光地へのメイン・アクセスとなって

いるからです。

しかし箱根登山鉄道は当初から観光鉄道として計画されたわけではなく、

明治時代に敷設された東海道本線が御殿場まわりとなって小田原が鉄道

幹線から取り残される形となったため、国府津から小田原を通り箱根山を

越えて旧東海道本線(現JR御殿場線)の裾野へショートカットする新線を

建設しようという壮大気宇というか無茶苦茶な計画だったようです。

この計画は当然ながら政府に却下されて湯本−強羅間のみが認められ、

1919年(大正8年)に小田原電気鉄道という名前で開通したわけであります。

しかしご承知のように同線は80‰という急勾配を粘着力だけで登って行く

わけで、信越線旧碓氷峠のアプト区間でさえ67‰であったことを考えると

いかに凄まじいかがわかります。

車輌は1919年(大正8年)の開業時に導入されたモハ1形の101-107、

1927年(昭和2年)増備のモハ2形Aの108-110、1935年(昭和10年)に増備

されたモハ2形Bの111・112とモハ3形の113-115の計14輌で1980年

(昭和55年)にクモハ1000形が導入されるまで運行されてきました。

あれ?1輌足りないとお気づきかと思いますが、モハ1形の105は1926年

(大正15年)に小涌谷−宮ノ下間で崖下に転落しています。

モハ1-3形は定格出力78.3kw電動機4個を装備、前述の通り粘着力だけ

で登坂するわけですが、登りよりも下りの方が怖いのは人間の登山も電車も

同じで、そのため箱根登山の電車には通常の空気ブレーキ、電気ブレーキ、

手用ブレーキの他に更にカーボン・ランダムブレーキという緊急時には

カーボン・ランダムをレールに押しつけて停車するという特殊なブレーキまで

装備した制動の権化のような電車になっています。(里見)