近鉄モ10000形

1960.3. 名張駅 Photo by: T. Satomi
「破天荒」という言葉がぴったり馴染む近鉄の名車、初代ビスタカーである。
1957年(昭和32年)に現れた小田急のSE車3000形が鉄道界に与えた影響
は凄まじく、とりわけ戦前から私鉄王国と呼ばれていた関西の5大手私鉄
会社が受けた衝撃は大きかった。
これに対抗する形で翌1958年(昭和33年)に近鉄が世に送り出したモ10000
形は小田急SE車とはまた違った形で衝撃的だった。
電車では世界初の2階建展望室を持ち、室内は冷暖房・シートラジオ・列車
電話など至れり尽くせりの装備を施した。
関東生まれのSE車が主にその車輌技術面で群を抜いたのに対し、関西
生まれのビスタカーは乗客サービス面でこれを凌駕しようとしたあたり、
両地域の車輌コンセプトの違いが現れていて興味深い。
先頭車モ10007の正面デザインはこれまた奇抜で、比較的おとなしい
SE車と好一対をなしている。ただこの面構えだけはさすがに派手好きの
大阪人にとってもちょっとアクが強すぎると感じたか、翌1959年(昭和34年)
より量産が開始された改良形ビスタカー10100形ではずっとおとなしい
デザインに落ち着いてしまった。

